自由学園 明日館でのファッションショー! 東京都が支援する、注目メンズのタークです。
久々にファッションイベントを撮ってきました。
日本のメンズブランド、TAAKK(ターク)の最新秋冬コレクション発表です。
なにしろ会場が、重要文化財の自由学園 明日館!!
建築に詳しくない私でも、設計者のフランク・ロイド・ライトの名はさすがに知ってますし。
幾何学造形・模様好きとしては、この高名な建築家の作風にとても惹かれます。
シャープなのに有機的、冷たく見えて温か、都会的であり素朴、という相反する要素が絡み合って共存している感じ。
あくまでも自分の感覚なんですけども。
自由学園 明日館には入ったことがあるものの、今回の会場となった講堂は未体験だったので、なんだかワクワクです。
(講堂の設計はライトの弟子の遠藤新さん)
ワクワクといえば、ここでファッションショーを開催するのがTAAKKということも嬉しくて。
デザイナーの森川拓野さんは、19年に東京都が主催する「FASHION PRIZE OF TOKYO」の第3回受賞デザイナーに選ばれ、都の支援を受けてパリコレにも参加した実力派。
ブランド立ち上げ以前からの知り合いでもあり、私的にも活躍が気になってます。
Pen「創造の挑戦者たち。」にインタビューがありますので、詳しくはぜひこちらをご覧くださいませ。
それでは、ステキな会場とステキな服をどうぞ!
とてもミニマルでシンプル。
でも一着一着の奥行きはどこまでも深く。
何種類もの服を一着の中でミックスしていく“ハイブリッド” 手法の新しい形。
TAAKKは違う服のパーツを組み合わせる一般的なハイブリッドの服づくりでなく、
オリジナルの布でそれを表現したことに個性があります。
21世紀のファッションデザインがそれ以前と異なるのは、
どのブランドもミックスカルチャーの方向に進んだこと。
20世紀はトラッドもモードも、ひとつのテイストに揃えるスタイルがルールでしたが、
モード×ストリート、ドレスウエア×ワークウエア、男性×女性といった発想をして、
西洋のファッション界を支配してきた貴族階級から庶民までのピラミッド構造すら打ち壊してきたのが現代デザインです。
ボーダーレス化の流れはますます広がり、まるで終わりなき探索の旅のよう。
次に述べる点はたぶん、服づくりのプロセスに関心がある人だけが面白がることかと思いますが、
途中から別の素材になっていく布は、服のどの部位に使うか計算して織っていく必要があります。
特殊な布を織れる工場の技術力も問われます。
長い布をパーツの形に裁断して縫い合わせるのが服ですから、どうカットするか、どう縫い合わせるかには高度な職人技も必要です。
布を立体的な身頃や袖にしたとき、寸分の狂いもなく横一直線に見えるように仕立てるのは困難を極めるはず。
裁断の無駄(余り布)もたくさん出るでしょうし、その分コスト増につながり高価な服になります。
でも森川さんはそれをやりました。
「美しい」
そう感じさせる完成度の高さで。
さらに付け加えますと、
音楽カルチャーやアートカルチャーといったセグメントされた知識やコミュニティと無関係な落とし込みなのも素晴らしく。
誰でも、どの世代でも難しく考えずに着られる。
たとえ自分が若いファッションモデルのルックスではないとしても!
顧客にしっかりと服を見せることが目的だったファッションショーの原点に立ち返り、
モデルウォーキングの最中に森川さんが服の素材、ディテール、テーマ、手法などを語りました。
観客はジャーナリストやメディア関係者が大半でしたが(この回は)、足早に歩いて目の前を通り過ぎる一般のショーと違い、一着一着を理解できて最高のやり方だったと思います。
いい服って、なにも遠目にインパクトのある服のことではなく。
舞台衣装じゃないんですから。
つくり手がちゃんと語れる、意味のある服こそ必要。
単なる “ノリ” の服なんてもういりません。
世界中のモードがそうなればいいのに、って心から思います。
ストリートっぽく撮っちゃいましたが、実際の森川さんはまったく気取らず飾らない笑顔の人。
デザイナーの人柄と服の価値を一緒にするのはいいことではないんですけど、応援する人が多いのも納得です。
場所よし、服よしの心地いいひとときでした。
写真 © 高橋一史
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